ジブリ映画の「風立ちぬ」。
その主人公・堀越二郎の声優が、エヴァンゲリオンの脚本・監督である『庵野 秀明(あんの ひであき)』であること、ご存知ですか?
声優としては素人!
なぜ庵野秀明が起用されたのか、とっても気になる…
そこで、調べてみました!
宮崎駿のご指名でオーディションを受け、この役に抜擢されたとのこと。
それには、「風立ちぬ」という映画背景、庵野秀明が鬱状態であった、ということが関連しています。
なぜ庵野秀明が声優として抜擢されたのか、詳しくご紹介します!
目次
風立ちぬの背景
「風立ちぬ」はどのような話なのか、そこに庵野秀明を採用した理由のヒントがあります。
時代背景
この作品の時代背景がどういうものだったのか、作品紹介から見えてくるものがあります。
ゼロ戦設計者として知られる堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄の人生をモデルに生み出された主人公の青年技師・二郎が、関東大震災や経済不況に見舞われ、やがて戦争へと突入していく1920年代という時代にいかに生きたか、その半生を描く。
時代は1920年代が中心。
関東大震災や経済不況、戦争へと突入する、非常に過酷な時代です。
生きづらい、大変な時代が背景となっています。
ポスターにも「生きねば。」と大きな文字で書かれているほどです。

強烈な一言ですよね。
「風の谷のナウシカ」最終巻である第7巻の最後のコマにでてくる言葉でもあるそうです。
宮崎駿の思いが伝わってきます。
主人公・堀越二郎という役
幼い頃から空にあこがれを抱いて育った学生・堀越二郎。
飛行機を作る夢を叶えながら、それが戦闘機に使われてしまうという、葛藤の中生きていく役柄です。
実は、堀越二郎は実在の人物。
宣伝担当Sです。
『風立ちぬ』で実在の人物をモデルとするのはジブリの長編作品では初めての事。
ゼロ戦を作った設計士・堀越二郎と小説家・堀辰雄のエッセンスをごちゃまぜにして主人公を生み出しました。宮崎監督が好きな飛行機や乗り物、そして恋やたばこがこの映画にはたくさん出てきます。— 映画『風立ちぬ』公式 (@EigaKazetachinu) July 29, 2013
実在の人物をモデルとするのは、ジブリの長編作品では初めてだったそうです。
だからこそ、声優に対してもこだわりが強かった、と想像できます。
庵野秀明が抜擢された理由
なぜ風立ちぬの主人公の声優として庵野秀明が抜擢されたのか、庵野秀明の状況から紐解きます。
鬱状態だった
風立ちぬの制作時期は、「エヴァンゲリオン 新劇場版: Q」の公開後。
この頃の庵野秀明は、鬱状態だったと語っています。
2012年12月。エヴァ:Qの公開後、僕は壊れました。
所謂、鬱状態となりました。
6年間、自分の魂を削って再びエヴァを作っていた事への、当然の報いでした。明けた2013年。その一年間は精神的な負の波が何度も揺れ戻してくる年でした。自分が代表を務め、自分が作品を背負っているスタジオにただの1度も近づく事が出来ませんでした。
他者や世間との関係性がおかしくなり、まるで回復しない疲労困憊も手伝って、ズブズブと精神的な不安定感に取り込まれていきました。
6年間、自分の魂を削ってアニメから再びエヴァンゲリオンを作っていたことの反動が大きかったようです。
また、「エヴァンゲリオン 新劇場版: Q」の世間の反響は辛口なものも多かったです。
伝わらなかったという現実、続編をうまくできるのだろうかという不安、いろいろなものがのしかかってきたことでしょう。
庵野秀明の「生きづらい世の中を生き続けている」姿が、主人公・堀越二郎と重なるものがあります。
宮崎駿が庵野秀明の抜擢理由について、こうコメントしています。
「庵野は現在、傷つきながら生きている。それが声にも出ていた。初日は声がなかなか出なかったけど、やっている間にどんどんよくなって、二郎を演じるのではなく二郎そのものになっていった」と絶賛。
マイナビニュースより引用
「庵野は現在、傷つきながら生きている。それが声にも出ていた。」
いろいろなものを背負い、鬱状態の庵野秀明だからこそできた役だったのです。
庵野秀明自身も、主人公・堀越二郎について、次のようにコメントしています。
この映画の中に出てくる堀越二郎さんと僕自身が共通するのは“夢を形にしていく”仕事をしているところだと思います。そこはすごくわかるし、自分の実生活にも通じるところがあります。
庵野秀明コメントより引用
「夢を形にしていく仕事」、大きな共通点ですね!
宮崎駿の愛情?
鬱状態だった庵野秀明を、宮崎駿が救った、という見方もできると思います。
鬱状態の後の「シン・ゴジラ」制作に対する庵野秀明のコメントが、こちらです。
その間、様々な方々に迷惑をかけました。
が、妻や友人らの御蔭で、この世に留まる事が出来、宮崎駿氏に頼まれた声の仕事がアニメ制作へのしがみつき行為として機能した事や、友人らが僕のアニメファンの源になっていた作品の新作をその時期に作っていてくれた御蔭で、アニメーションから心が離れずにすみました。友人が続けている戦隊シリーズも、特撮ファンとしての心の支えになっていました。
「宮崎駿氏に頼まれた声の仕事がアニメ制作へのしがみつき行為として機能した」と庵野秀明が語っています。
これは、風立ちぬの声優を担当したことを表しています。
「風立ちぬ」の声優は、アニメーションから心が離れずにすんだ、一つの大きな要因でした!
「風の谷のナウシカ」の制作に携わっていた、庵野秀明。
そこから、宮崎駿と庵野秀明には、師弟のような関係ができていました。
ここで潰れるな、という宮崎駿の愛情にも見えますね。
かつてもジブリチームが救っていた
エヴァンゲリオンのアニメが終わった時、世間は不完全燃焼の声であふれていました。
「庵野秀明の自己満足ではないか」、「意味がわからない」、そんな声が多かったのです。
命懸けで作った作品が、悪評であふれ、庵野秀明が普通でいられるわけがありません。
この時に助けたのが、ジブリチーム。
多くの企画書を庵野秀明に書かせて、アニメの現場と繋げ続けたのです!
そのおかげもあって、庵野秀明は再び動き出すことができました!
声の存在感
プロデューサーの鈴木氏は、庵野秀明の採用理由について、次のようにコメントしています。
役者さんでは演じることのできない存在感です。映画を設計する監督と飛行機の設計士、作るものは違うが共通点もあると思いました。こじつけですが(笑)
マイナビニュースより引用
「役者さんでは演じることのできない存在感」がポイント!
宮崎駿も同様のことを話しています。
うまくやろうとしなくていい。いい声だからでなく、存在感で選んだのだからそれを出さなくてはならない
マイナビニュースより引用
声から感じる、存在感で選んだ!

主人公にイメージしていた、3つのポイントにもピッタリだったようです。
- 早口である
- 滑舌がよい
- 凛としている
宮崎駿の指示に従いながら二人三脚でこの役のアフレコに臨み、完成させました。
棒演技に耐えられない…失敗では?そんな声もあります。
他のキャラクターの声優が瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦など、豪華俳優陣が務めました。
そのため、庵野秀明の演技力が、より低いように見えたのかもしれません。
演技はもちろん大事ですが、存在感に要注目です!
まとめ
「風立ちぬ」の堀越二郎役に、なぜ声優未経験の庵野秀明が抜擢されたのか、理由をご紹介しました。
作品の時代背景、当時の庵野秀明が鬱状態だったことも、大きな要因のようです。
宮崎駿の優しさも、感じられます。
存在感で選ばれた庵野秀明の声、ぜひ楽しんでくださいね!